散策会の報告(駒込、飛鳥山方面) 石田 晴康
今回は、駒込から飛鳥山方面へ探訪する。
駒込駅では、ホーム前の土手につつじが咲き始めていた。
駅から散策の始まりとなった。
丁度、駅から出ようとしたとき、雨がザーット降ってきた。まさか、雨が降るとは
思わなかったので、傘を持って来なかった。やむを得ず、駅の売店でビニール傘を
買う羽目になった。
北へ一キロくらい行くと、旧古河庭園についた。外の塀は、大きな石を積み上げて
どっしりした土台にしてあった。殿様の屋敷にある塀のようだ。
門を入ると、4月29日の今日は、緑の日とのことで無料であった。
無料とはついている。そういえば今は祝日が多く、今日は何の休みかも
意識していないで休みを喜んでいるだけだ。
園内を少し進むと、洋館が見えてきた。 わずかこげ茶のかかった黒の外観は、
深みのある色合いで重厚感を増している。見るまでは、東京駅の赤レンガの建物を
想像していたので、余計惹かれるものがあった。今日は室内の見学会はないとのこと。
披露宴の予定が入っているようだ。都の庭園だから、貸室料は割安で、豪華な宴を
ひらけるのではないか。
休みにもかかわらず、人出は少なく、園内を落ち着いて散策できた。
丁度、雨もあがり、新緑が余計鮮やかに映える。
建物の脇に洋風の庭園があり、花がさいていて彩りを添えている。
建物正面の前が傾斜地となって、下がっている。その斜面につつじが一面に
植えてあり、見頃であった。 植木を周りに配置し、建物正面に広々した
開放感を演出している。
今は、ビルが林立した都会の中にあるが、当時は、庭から東京全体、東京湾や
富士山まで見渡せただろうと思われる。
さらに下ると木が生い茂る森になる。
そこを抜けると池に出る。 典型的な日本庭園であった。 池の周りを
緑の木々が囲み、都会の真ん中にいることを忘れさす。車の音も聞こえない。
鴨が三羽のんびり羽を休めていた。
さあ、次に、飛鳥山方面へ行こう。
途中、七社神社を発見する。結構、立派な神社のようだ。
かっては、神明宮の社地であった。神明宮は天照大神を祭神としており、樹齢千年
以上と言われる杉の神木があったそうだ。今は、枯れて切り株だけが残っている。
国の印刷工場の前を通過する。ここで、紙幣を印刷している。侵入しないように
高い塀に囲まれて厳重な防犯対策がされているのかと思いきや、民間の印刷工場と
変りないのが意外であった。
飛鳥山に到着した。
ここも、木々にかこまれ、近くを通る車や、新幹線の音が聞こえないので、
都会の中のいいオアシスとなっている。
飛鳥山は八代将軍徳川吉宗が江戸庶民の行楽のために桜を植えたのが始まりである。
江戸時代はまだ小さい都市だったから、銀座付近の市中から,4時間かけて
来たのだろう。 きつねや狸の出るいなかだったでしょうから、今なら、奥多摩の
山奥に出かけるようなものだ。
ここには、先土器、縄文、弥生時代の遺跡が残っているそうだ。
明治時代に活躍した渋沢栄一の居所だった邸宅を見る。
その中で、書庫として建てられた青淵文庫があった。 神宮外苑にある
記念館を連想させる外観であった。 外壁の模様が、なかなか、他に見られない
独特のもので、今見てもおしゃれだ。 主の好みが反映しているようだ。
渋沢栄一の80歳のお祝いと男爵から子爵への昇格のお祝いとして作られた。
隣に、渋沢栄一の資料館があり、立ち寄る。 渋沢栄一は明治時代のすごい人の
程度しか知識がなかったが、その足跡を見ると、功績の偉大さに驚いた。
江戸時代に生まれた人なのに、九十一才まで生きていたのにはびっくりする。
今の寿命に換算すると百五十才ぐらいまで生きていたということだ。
時代が日本の産業発展にかかせない人として長生きさせたような気がする。
余程才能があったらしく、初めは江戸時代の幕引きをした徳川慶喜に仕えた。
明治時代になってから、大久保利通に請われて、大蔵省の仕事を引き受けた。
その後、大久保利通と意見が対立して、大蔵省をやめた。 日本の産業発展は
いかにあるべきかを考えて、次々と計画を実行した。設立した会社は、第一銀行、
日本郵船、東京海上、東京ガス等、500社にのぼる。
また、商工会議所を設立した。
さらに、教育にも熱心で、一橋大学、日本女子大学等の設立をした。
また、福祉にも熱心で、セイロカ病院を設立した。国際交流にも足跡を残している。
田園調布の市街地までも開発していた。
明治時代の初め、渋沢栄一を含め、幕末の志士達がわずか三十才ぐらいで、
革新的な政府と新しい国作りを実現したのには驚く。
その才能と実行力がすごいとつくずく思う。
渋沢栄一の資料館の隣に、紙の博物館があった。この付近に昔製紙会社が
あったことで、できたようだ。
ここで、たまたま、紙を使った芸術の作品が展示してあった。
北岡謙輔氏の作品である。紙であるのに、動物の形の特徴を良く捉え、それらしく
立体的に表現している。
作品には、花しょうぶ、鳥、かに、ひょっとこ等があり、紙であることを忘れてしまう
出来映えだ。
王子では、今も路面電車が走っており、懐かしさを感じる。
王子駅前の居食屋に入いりビールで乾杯して、近況を語りあった。