かも次郎の墓 2013.06.01 吉田 頼平 岩壁の洞窟に小さな祠がある、その前に一匹の年老いたカモシカがいた、毎日、祠 に通い続けて100日目の満月の夜だった、霧がたちこめて、中から仏神のような人間 の姿が表れて、「カモシカ君、君の願いをかなえて上げよう」とカモシカに触れると その瞬間、カモシカは女性に変身した。
その後、大自然の中の黄泥色の露天風呂に美しい女性の姿が時々ありました。
ここは、信州真田市の角間渓谷の山奥の秘湯の角間温泉、左右の岩壁に囲まれ、長い 間人間を寄せ付けませんでした、後日、戦国時代真田十勇士で有名な猿飛佐助・霧隠才 蔵などがこの岩壁で修行した場所で有名になりました。
カモシカは、のんびり平和に暮らしていましたが、角間温泉の旅館に人が来るように なると、どんどん山は荒らされて、カモシカは、山奥に追いやられたが、人間に興味 をもち時々旅館に様子を見にきたが、以外と人間は危険で無いことを知り、旅館の人々 とは仲良くなった。
旅館の人々は、このカモシカに「かも次郎」と名前をつけ可愛がりました。
「かも次郎」が女性になり男女混浴の露天風呂に入っていると、一人の老人(男)が、 「女性に対して失礼します」と入ってきました、老人は暫く無言でしたが、そのうち、 一言「もうこの世は嫌になった、今日が最後だ。」と涙を流し泣きだした。
女性は心配して「どうしたのですか、訳を話して下さい」老人は、「結婚以来喧嘩を しなかったが、先日大喧嘩をして俺は死んでやると家を飛び出しが、いざとなると 死がこわくて、どうして良いか迷い悩んでしまつた」と話していた。
変身した女性は、内心は今で人間は単純で馬鹿でどうしょうもないと思っていたが、「優 しく生きていると、いろんな事があり、喧嘩ぐらいで男の見栄なんて捨てなさい、今す ぐに奥さんに電話してごめんなさいと言って明日帰ると言いなさい」と言った。
翌日、老人は晴れ晴れした顔で旅館を出て行く姿があました、その姿を見た女性は、 ホットした瞬間グラッと、そのまま眠るように倒れて、暫くすると女性から元のカモシ カの姿に戻っていきました、このカモシカを不憫に思い、旅館の人達は岩場の見晴らし の良い場所に「かも次郎の墓」をたてた。 <END>
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