“東日本大震災 津波のつめ跡” 2012年9月25日 石田 晴康
■ 東日本大震災の報道を詳しく見たが、報道が一面的で偏っているように思えた。 現地の人の本音を 聞きたい。 それなら、自分で現地に行って肌で感じるしかない。
現地に行くいい方法が見当たらず、それで被災地見学ツアーに参加した。 場所は岩手県宮古市の北方の陸中海岸国立公園沿いの海岸である。津波の被害が甚大な所だ。
■ 田野畑村 島越地区
------------------------------------------- 数週間前にも地震があって、津波警報が出たがその時は10cm程度の津波でたいしたことはない 印象だった。 そのあと、今回の津波のときは、地震があったが、どこも家屋は倒壊しなかった。 それで前回並みの意識があった。 しかし、津波がくるので避難するよう村内放送があった。
高台にある住宅は津波の被害を免れた。 ここまで避難した。杉林が枯れているが津波がかぶった 塩害による。 左手のトンネルは北リアス線が通っていたが、津波で崩壊した。
しかし、あっと言う間に津波が引いて、瓦礫の山となった。さっきまであった家はあとかたもなかった。 また、津波が来るかもしれないと思い、後ろの山を登り、半日がかりで、奥の部落にたどり着いた。
海も津波のあとは、瓦礫が漂っていたが、今は何もない。 材木や発泡スチロール等は見当たらない。 震災前と同じに見える。 一年後、昆布のような海草類が増えてきたそうだ。
ここは、昔から、繰り返し津波の被害を受けてきた。つまり、歴史は繰り返すことが史実で明らかになっ ている。
田野畑村では *貞観地震 貞観11年5月26日 大きな被害
*慶長三陸地震 1611年12月2日 大きな被害
*明治三陸大津波 1896年6月15日 マグニチュード 8.2 〜 8.5 死者 128人 流失家屋 32戸 地震後30分で津波 津波が海抜25mまで上がった。
*昭和三陸大津波 1933年3月3日 マグニチュード 8.1 死者 83人 流失家屋 131戸 地震後30分で津波
*チリ地震津波 1960年5月23日 震源地 南米 チリ沖太平洋 マグニチュード 9.5 死者 なし 地震後22時間で津波
*東北地方太平洋沖地震 2011年3月11日 マグニチュード 9.0 死者・行方不明者 40人
作家の吉村昭氏は、このことに注目して、ノンフィクションの「三陸海岸大津波」を1970年に書き、 また津波が来ると警告してきた。
■ 田野畑村 羅賀地区
■ 田老町
インドネシアでも大津波に遭い、甚大な被害を受けたことは記憶にあたらしい。この時、海岸の マングローブ林が津波の被害を緩和することがわかった。
日本では、松林を津波防災用にしたが、全く効果がないことがわかった。 一方、現地に自生している多様な植物による森が津波を緩和するという、日本の植物生態学の第一人者による 実践の成果がある。これを国の官僚がいろいろ足をひっぱって、やらせないため頓挫している。
官僚は去年と同じことを継続することのみしかできない石頭のため時代の進歩を受け入れず、 無駄に税金を浪費している。 三重の堤防では、防げなかったので、今度は6重の堤防を作ろうと言い出すだろう。
ここではまだ瓦礫を撤去しきれず、撤去作業が続いている。 タイヤとか家電品とかを分別しているようだ。(写真22,23,24)
■ 宮古市
ここら辺では比較的大きな街で、漁業が盛んだ。 市内の真ん中に河が流れていて、その周りに住宅地がある。 洪水に備えて、河に高さ3mの堤防がある。(写真33)
津波がこの堤防を越え、被害をもたらした。堤防があったため、壊滅状態ではなく点在して住宅が 残っている。 使えるかは定かではない。(写真31、32)
■ 浄土が浜
■ 感想 1 ツアーで行った時には、大震災後すでに一年を過ぎていた。 津波当時は、動物の死体や魚の腐った臭いで、息が詰まるほどだと地元の人は言っていた。
ツアーでは津波の痕跡がわずかにしか見当たらないので、もっと早く行っておけばよかったと残念に思った。 打ち上げ花火をテレビでみるような感じで、現実味が薄かった。
2 自然は、以前と変らない(壊れない)。しかし、人工物は壊れると地元の人が言っていたが、 鋭い指摘に思えた。
3 田野畑村から北隣に普代漁港があるが、ここは津波の被害を受けていない。 歴史的に被害を受けるところは決まっているように思える。 地形学的に津波を受けやすいところと受けにくいところがあるようだ。 海底の地形を調べれば、より効果的な防災対策ができるだろう。
4 今回の津波の前に前兆現象はなかったそうだ。 いわしの大群が来た。 マグロの大群が来た。 発光現象があるとか、雷鳴のような音が聞こえる等が良く言われている。 今回そのようなことはなかったそうだ。
数週間前の地震、津波では被害はなかったので、油断があった。 おおかみ少年にならないように、避難を判断するのは難しそうだ。 津波来襲の情報をいかに早く、全員に知らせ、避難させるかで、生死が分かれると感じた。 地震により違うが、10分〜30分程度の避難の時間があるので、その間如何にして高台に逃げるかだ。 end
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