通勤風景      2010.05.05   天笠 富夫

定年後の勤務先は、京王線千歳烏山から明大前(井の頭線)と渋谷(東横線)で乗り換え

ていく、その通勤途上で気になった話を三つ取り上げてみた。

 

[絵の話]

渋谷駅の構内で井の頭線より東横線に乗り換える途中にある(井の頭線の)通路には、縦

5.5メートル横30メートルの巨大な絵が飾られている、この絵は芸術家岡本太郎の作

品で「明日の神話」と名付けられている、絵にインパクトが強く、不気味で、人に元気を

与えるものではない、時々、チラットと見るが、重々しく絵に見下げられているような感

 

じがして朝から見たくない、なんでこんな公共の通り道に飾らなければならないのかと

常々思っています。

 

<「明日の神話」の絵の説明>

インターネットの説明によると、メキシコの実業家の依頼でホテルに飾る

ために制作していたが、実業家の経営状態が悪化しホテル完成されず、絵

はメキシコシティの資材置き場にしまわれていたのを修復し渋谷駅構内に

展示したという、絵の内容は原爆が炸裂した瞬間を描き、二十一世紀の見

えない不安定な時代を暗示しているという。

 

[喫煙所の話]

前の勤務先中目黒に通っている時の話である、渋谷から東横線で中目黒の改札口を出て右

に行くと、大きな建物がある、その建物の入り口には野外の喫煙所がある、その近くに毎

朝タバコを吸わないがじっと立っている35歳位の女性がよく立っている、よく見ると4

0歳位の男性のタバコを吸い終わるのを待っているようである、喫煙をすました男性は女

性の側に近づき、女性は男性と手を組むようにして50メートル先のビルの入り口に向か

うのが常でした、

 

暮れには女性がセーターらしきものを袋に入れて男性に渡している姿をみてほほえましさ

を感じていた。ある日女性がいつものようにタバコを吸い終わるのを待っていました、男

性は何となく少し苛立って、いつもよりあんまり美味しそうにタバコを吸っていませんで

したが、タバコを吸い終わると男性は突然女性を無視して女性のいない方向へ一人で歩い

ていってしまいました、女性は一人取り残され一人でビルの入り口歩いていきました。

 

喧嘩でもしたのかと思っていましたが、その後女性は、4〜5日ほど以前のように男性が

タバコを吸い終わるのを待っていましたが、男性は相変わらず女性を無視しており、とう

とう女性はタバコを吸い終わる事を待つことをしなくなり、私の前に現れなくなった。

 

何があったがわからないが、二人の仲の良い姿を見ているだけに、どこかで二人が仲直り

し腕でも組んで歩いている姿をみたい気がします。

 

[駅の通路で座っている人の話]

3月のある日、年齢45歳くらい、ジャンパーに白いワイシャツそしてズボンもヨレヨレ

していない人が、渋谷駅で東横線とJR線の乗り換え出口の通路に正座して座っている、

前に空き缶などが置いてあるわけでもない、それにしても背筋がビンとして姿勢が良い、

浮浪者にはとうてい見えず会社でリストラにあって浮浪者の真似をして座っているのかも

 

しれない、現在では運が悪ければ、多かれ少なかれ仕事につけないで路頭に迷うことがあ

る、自分に置き換えてみると、浮浪者の真似はできないが、もしも浮浪者の真似をしたら

あんなに整然と座っていられるか疑問である。少し見ていると65歳くらいの通勤途上の

小太りのおばさんが座っている男にお金(札)を渡していた、男はお礼をいい、おばさん

は忙しそうにバス停の方向に行ってしまった。

 

すると男は驚いたようにお札をとりあげ、一生懸命お札の透かしを確認していた、そのお

札は5千円であった、大金をもらって男が確認する気持ちも分かるが、おばさんはその男

が他人事に感じられず、自分の身近な人に思え5千円を渡したのか、それとも千円札と5

千円札と間違えて渡したのかもしれない。ともかくまともな人がまともに働け、まともな

生活ができる社会になってほしいものです。

 

 座っていた場所              

                               ―――おわり―――

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