母の夢は世界旅行                2010.12.13吉田 頼平 

 大都会を一望できる高層ビルのマンションに母は息子と住んでいた、母の夢はいつか世界一周旅行を息子と一緒にする事だった。息子は、今は小学三年生だから今から英語塾に通わせれば、いつか英語がペラペラになって旅行の時都合が良いと考えたのであった、息子は六年生になったが英語が上達する気配は全くなかった。

 

でもABCから日常会話の「おはよう」位は出来る程度でそれ以上は無理であった、

ある日母は英語に関する本が沢山並んでいる本屋で立ち読みし、そしてその中の一冊の本をとった「英語上達法」とりあえず500円で買う、読むと次のような内容であった。英会話は常に使う事で家族でも知っている単語を並べて会話することとである。

 

もっともな話しであるが、その中に「外人に変装してデパートに行き、私はベトナム人で日本語がわかりません、少し知っている英語で話しても良いですか、」と言って度胸をつけて挑戦する気持ちが大切であると書いてあった。母親は、これは面白いと、

 

息子と近くのデパートの靴売り場に行き「私たちベトナム人です、日本語わかりません、英語は少し知っています、英語で話して良いでしょうか」と子供にいわせると店員は「すみません、少し待って下さい、英語の上手な人をつれてきます、」と言って暫くして別の店員が来た。

 

易しい英語会話で、ついに靴を買ってデパートを出て母子はお互い成功だと思った。

以来この手を使いレストラン・ショピングでも外国にいるつもりでカタコトの英語で通じたのであった。10年の歳月が流れて母の夢の世界旅行へ旅立った、その旅は何の問題もなく楽しかった。

 

 

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