黒船物語 2010.09.20吉田 頼平 伊豆下田の老舗旅館黒船ホテルは、団体旅行が主流で栄えたホテルであるから、個人旅 行客に切り替えるに苦労していた、赤字で従業員も料理人も半分になり倒産の危機に瀕し ていた。
このような環境にもかかわらずなぜだか、青森県の下北半島から若い娘が見習いの接客係 として採用された、本人はチョツト肥満ぎみであるが愛嬌のある可愛い娘で地方特有の気 さくさが宿泊客に好かれていた、名前は美智子です。
このホテルは毎月一回、全従業員と社長の話し合いがもたれていた、美智子は新人ながら 次のような提案をした、「ホテルにある豪華な温泉プールは利用客も少ない、壊してここに 水族館や釣り堀を造ったらお客さんにもっとよろこんで頂けると思います」。
社長は暫く考えた末、「言われてみると、その通りである、昔の団体旅行者が中心の時代は それなりに効果があったが、今は人気がないのは事実である、資金面で明日にも相談して みよう」と言って素敵なアイディアであると金一封を彼女に送られた。
その後もいろんな提案をした、その中に金賞になったのは、一人で来る客にただ温泉に入 って美味しい食事をするだけでは、寂しいので、可愛いネコを貸し出したり・各部屋の接 待係員はお客さんとの会話を大切に、時には悩み事を聞いたりし積極的に話相手になろう と提案した。
また美智子は小さい時からピアノを習っていたのでこの事が何か役になる方法はないかと 考えた末、全従業員一人一芸を披露し、お客さんと一緒に毎日9時から宴会場で披露した ら面白いと考えた、またこの時手作りの衣装を準備しお客様に着せたら旅の想い出になる と話をした。
この提案は銀賞に採用されて即実行に移り、まず衣装作りが大変であつたが和気アイアイ と進んで客の分を合わせて約100着分用意された、実際はじまってみると盛況で盛り上 がった、例えば社長がドジョウすくいに料理人は落語、お客さんは演歌と受付の人は男前 なので司会を担当、歓喜の中で時間を過ごしていった、最後は美智子のピアノで全員の歌 「また会いましょう」で解散しお客の評判も良かった。
その上美智子はこれからのホテルは外国人観光客に力を入れるべきだと話をし、その為に 私達は英会話や中国語を学ぶ必要がある、彼等のために奉仕しようと提案をした、美智子 が入社以来どんどん提案するので、他の従業員も刺激され負けまいと改善提案をしはじめ た、黒船ホテルは数年後外人客も増えて、平日でもリピターの客でほぼ満員状態になった。
地方新聞の記事に黒船ホテルの倒産危機を救った見習い接客物語が載った、ちょうどそ の時地方の有名温泉旅館の社長がこの地を旅行中で、この新聞記事読んで感動して、黒 船ホテルの社長に面会を申し込み、是非一度美智子さんにお会いしたい、実は息子の嫁 捜しの旅をしていると話をしていた。
黒船ホテルの社長も「彼女は当ホテルで大切な人材ですが、良いお話なのですぐ本人を 呼んで来ます」こうして話はトントン拍子に進み結婚が決まりました、結婚式は黒船ホ テルを貸し切り婿側の従業員を招待して盛大に行われた、次の日は婿側の温泉旅館に黒 船の従業員が行き再度結婚式が行われ花婿・花嫁を祝福し前途を祈った。 ―――END―――
|