童話 釈迦二世 2010.07.28 吉田 頼平 ある村に働き者の夫婦に男子が産まれた、顔立ちが整い目がパツチリと可愛い赤ん坊で、 オデコの中央にはホクロがありました。成長と共に日々可愛さが増して村人はこの子の笑 顔を見たさに日に一度はやつてきました、以前は長い間不作が続いたが、不思議な事にこ の子が生まれと豊作が続きました。ちょうど5歳になったある日、この家に外人の一人の 僧侶が訪ねてきました。
夫婦は恐る恐るこの僧侶に会いました、最初に僧侶は自己紹介をしました、「私はある国の 僧侶でダライ・ソンです、本日はお願い来ました。今私が住んでいる国は、国も人も乱れ 放題で明日はどうなるかわかりません。心配で毎日苦しみ悩んでいます、数日前お釈迦さ まが夢の中に現れて日本に行きなさい、そしてこの子に会いに行きなさいと言って、子供 宛の手紙と日本の子供の住所が書いてあるメモが置いて消えました。」と言いました。
あまりにも突然の話なので頭の中が混乱した夫婦は子供を呼んで手紙を開けた、内容は次 のような事でした、「偉大なる子へ私は釈迦といいます、今はこの世の中にいませんが、今 でも皆さんの幸せを願って天国から見守っています、幼い君には残酷を承知でお願いした いのは、しばらくの間私の養子になってこの僧侶と一緒に彼の国に行ってほしいのです。
君はこの世に運命を背負って生きる。その国が平和に戻ったら、君は自由の身でこの家に 帰れるが、だが何年かかるか、一生帰れなくなるかも知れません、勿論断ってもよいので すが両親と相談しなさい。」と書かれた文面を見て、両親はパニック状態で言葉が出ません 結局一週待って決める事になりました、この話が村中に伝わって大騒ぎで、今ではこの子 は村の大切な宝ものの存在で村人たちは絶対断るべきだと言っていました。
夫婦は今この子と別れて耐える自信はありません、しかしお釈迦様の願いでは断るわけに はいかず悩んでとうとう一週間目がきました、夫婦は子供に自分達の心境を話しました、 息子は言いました「お母さん・お父さん有り難う、僕は5歳になりました、もう一人前の 子供です、あのおじさんの所に行こうと思います」と言いました、そして皆さんを集めて 下さい、お別れの挨拶をしたいと言いました。
家が狭いので広場に村人全員が集合しました。僧侶も両親も集まり昨晩お母さんが寝ずに 作ってくれた洋服に身を包んだ子供かが登場すると朝日が謝して子供の姿が黄金に輝きお 釈迦様二世の誕生のような光景でした。
かたずを飲んで見守るうち子供が話し出しました、「僕はここの家に生まれお母さん・お父 さん・村のおじさん・おばさんに可愛がってもらって幸せでした、僕は5歳になりました、 昨日夢を見ました、知らない優しそうなおじさんが出て来て一緒にいろんな国に行きまし た、金持ちの国では贅沢して過ごしました、又貧しい国では三日間なにも食べず飲まずお 腹がすいて仕方がなかったです、そしてこのおじさんは色んな事を僕にわかるように説明 してくれました。別れる時涙を流しながら僕の手を握って手紙の主の釈迦だと言いました。
僕はこのおじさんの事は良くわかりせんが信用できる良い人のように思いました。だから 僕はこの僧侶のおじさんと一緒に行く事に決めました。いつかお母さん・お父さんのこの 家に帰ってきます、しばらくの間僕のわがままを聞いてください」と言って挨拶が終わり ました、
会場のあちこちからすすりなく声が聞こえます、両親はあまりにも立派な話に別人の話の 気がするようで目を涙が満ちてポタリと落ちて只これでよいのだと納得したのであった。 ――――END――――
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