化け猫         2010.03.03  吉田 頼平

 国連の調査によると人間のペットとして飼われているのは、犬猫が60%で、動物の他

に魚や鳥類が飼われていると報告されている。猫好きな人はお人好しで映画の脇役タイプ、

一方犬好きの人は知的マスクで性格は冷たくニヒルで、一匹狼で映画の主役タイプ。

 

ある所に猫好きな女房と猫嫌いな夫がいた、そして一匹の猫が飼われていた。その猫はシ

ャム猫で常に妻に甘えて生活をしていたが、決して夫にはなつかなかった。旅行好きな妻

は最初の頃は猫を携帯用の運搬箱に入れて連れて行ったが、旅先で迷い猫になり大騒ぎし

旅行を楽しむどころではなかったので連れていかなくなった。

 

次の旅行からペット専用ホテルに預けたが一泊3万円と高いので、渋々夫に1万円で面倒

をみてもらうことにした。しかし、ここから猫の悲劇が始まった。妻が旅行に行った途端

夫は猫を家から追い出した、困ったのは猫、常に家の中で過保護で育っているから、家の

まわりうろうろしていたが、用意された餌は野良猫に食べられ腹は減るし、野良猫には、

いじめられるし散々であった。

 

夜になるとニャーニャーと鳴くが夫はしらん顔で酒を飲んでいる。猫は最後の手段、母親

から別れる時教わった化ける呪文を唱え、若い娘に変身し玄関をトントン叩くと夫は根が

助平ですから、娘さんの姿にびっくり事情を聞くと「旅の者で宿を探しているのですが、

泊まる場所が無いので一晩泊めてほしいのですが!」と言われ、夫はどうぞと家の中に

 

入れて特別おいしい料理を用意して女房の布団に寝かせると、娘さんは朝になると家の外

に出て行きました、猫は、次の日もまた次の日もいろんな女性に変身しては夫を騙し続け

てまんまと大成功しました。妻が旅行から帰ってきて元気で肥えた猫を見て満足しまし

た。しかし夜になって妻が布団の中を見ると、布団の中は猫の泥んこの足跡だらけでし

た。

 

妻から「これは約束違反なので、1万円の支払いはできません」と言われ、猫に騙された

と納得しました。そして3ケ月後妻はまた旅行に行く事になり、夫は一泊1万円の前の条

件で猫を預かる事になりました。妻の姿が見えなくなると「この化け猫めえ、よくも俺を

騙したな」と棒を持ちあげて家から追い出して、

 

「あんな猫のどこが可愛いんだ、何の役にもたちゃしない、昔はネズミをとったが、今じ

ゃあ、ねずみを見れば逃げかえってくりゃあ、台所でニャアニャア甘えてよく気持ちが悪

くならないのが不思議だ」と一人言を言っていた。

 

夕方、妻の妹が夫婦喧嘩して一晩泊めてくださいと訪ねてきた、猫が化けて妹になったと

思って夫は、「足を見せろ、足を見せろと5回言った後、もう二度と騙されない。」妹は姉

の夫が、気が狂ったのではないかと思い、夫婦喧嘩は一時中断し自分の夫に相談をし、姉

の夫を強引に精神病院につれていき、入院させ精密検査をした結果、初期の痴呆症と診断

された。

 

退院後夫は気がおさまらない、猫の奴捕らえて痛い目に合わせてやると外に出ると、妻が

帰ってきた。今度は猫が妻に化けているな!「やい化け猫、妻に化けても、もう騙されな

い足を見せろ」と言うと、妻は「あんた何を言っているのよ、わたしだよ」と言うが夫は

「うるさい本物の妻ならば足を見せろ」と言い張る。

 

妻は「いい加減にして、怒るわよ」と言うが、夫は「面白い、怒れ・怒れ」と言うと、妻

は、「仕方がないわね」と妻はスカートを持ち上げて足を見せた、夫は言った「やはり猫

が化けた足だ、妻の足はニンジンのように赤味があって可愛い足で白く肥えた大根足では

ない」そんな時猫がニャーニャーと鳴きながら妻の所へ来た。

 

「エー、本物の妻かい、ごめん・ごめん俺が悪かった堪忍してくれ」妻は夫が初期の痴呆

症であるのを妹から連絡を受けていたため「わかればいいのよ」と納得した。

それからの旅行は夫婦と一緒に猫を連れて行くようになり、夫婦仲良く暮らしました。

                          ――終わり――

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<後記>

写真を入れようとしましたが、イメージが思い浮かばないので、やめました。 天笠