洗剤を飲んだ男                    2009.11.20 吉田 頼平

 

 私の妻の両親の墓は多磨霊園にある、広く静かで小鳥がさえずり素敵な所である。夏のある朝、突然妻に墓地に雑草除けに小石を敷きたいから車の運転を頼むと言われる、「突然言われても私にも今日の予定があるから困る」と言ったら、妻は「どうせ碁に行くだけだろう」と言われ、結局行くことになった。日曜大工屋で1袋10Kgの小石を6袋車に積んで出発、墓について驚いた雑草が信じられないのび放題。

 

まず草むしりで汗を流し小石を敷いて、まあまあ満足、墓の両親も喜んでいるだろうと思って前を見ると、そこにビンが置いてあった、そのビンは先日旅行に行った時、ホテルの夕食時に飲んだ冷酒のビンで気に入って土産に持ち帰ったビンであり中に水が入っていた、汗でのどがカラカラに乾いてきたので、無意識にビンの水を飲んだ。

 

その時から悲劇は始まった、妙な味なので妻に言うと妻は顔色を変えて「バカそれは墓石を掃除するための洗剤の水だと」言われた。あわてて水飲み場でゲイゲイ吐き出したが、飲んだ水はでてこなかった、それなら水をガブガブ飲んで薄めてやる、水を飲んだが吐き気がして少し吐いた。

 

家に戻り医者に直行する、医者言うには「飲んだ洗剤は中性かアルカリ性か、仮にアルカリ性だと問題だ、胃を洗う必要があるが、当病院では設備がない中毒専門の病院の電話番号を教えるから、とりあえず洗剤の種類を家に戻ったら確認して下さい」慌てて家に戻り洗剤のラベルを確認すると、中性洗剤であった、ラベルを読むと次のような注意書きがあった、仮に飲んだら水分を充分取って下さいと書いてあり、ほっとしてこの件は落着となった、

 

しかし妻との話のやりとりは続いた、「水は水筒に入っているのでしょう、飲む時異変を感じなかったは、ボケたのではないか」と言われ、負けずに私も、「これからは、貴方の料理に何が入っているか確認しながら食べさせて頂きます」と言った。

                           ――――END―――

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