童話 「死んだらあかん」     2009.10.9 吉田頼平

 

好太郎は今35歳、小さい時から親が教育に対して厳しく毎日勉強で常にクラスNO1を目指して大きくなり、一流大学を卒業し一流会社に就職して数年後に職場結婚した。現在は小学校五年生の息子(雄太)と夫婦二人で、都心の高層マンションに住んで、休日は家族一緒にデパートでショツピングを楽しみ、季節毎に一泊のドライブ旅行に行ったりしていて一見幸せに暮らしていました。

 

しかし妻は、内心真面目だけの夫に物足りなさを感じて、結婚に対しては自分の描いた夢とは違い毎日が退屈で退屈でしかたがなかった。ある日、夫にパートで働きたいと言い勤めに出た、働くようになって妻は職場の同僚たちとカラオケや飲み会・旅行にもはまり込んでいった、それから一年後若い男と駆け落ちした。

 

夫はショツクのあまり、食事も通らず寝込んでどんどん痩せて、立ち直られず会社を辞めてしまった。雄太に事情を話し妻に逃げられ何もかも終わりだ、生きるのがつらいので死にたいと告げた、あまりにも変わり果てた姿に、息子はなぐさめる言葉もなく一緒に死のうと決めた、最後に特上の寿司で食事をして、二人は階段を登り、手を取り合って屋上に向かった、屋上の入り口には錠があったが壊して屋上に出た。

 

自分の住んでいる町が一望できる、二人は柵の金網に手をかけた時、突然空が暗くなり雷が鳴り激しい大粒の雨が降り始めた、あまりの恐ろしさに二人は柵の片隅に隠れ抱き合ったままじっと雨のやむのを待った。10分後うそのように青空が戻った。父がぽつりとつぶやいた、「雄太ごめんね、俺は悪い夢でも見ていたのかな、今の雷雨が、私のモヤモヤを洗い流してくれた、馬鹿な事を考えていた、もう一度二人でやり直したい、心配をかけて本当にゴメンネ」と言って雄太を抱き続けた、暫くして二人は元気な晴れ晴れした顔で自分の部屋に戻った。

                          ――――END――――

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